成清 美朝 Misa Narikiyo Art works and e.t.c
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成清美朝は泰西名画をモノトーンのパステルで模写したように描く。ただし、パステルで描くのは線や点でなく昆虫の蟻である。大きさ5mmの何十万という蟻の大群が、ボッティチェルリのビーナス誕生や、ミケランジェロの聖家族や、スルバランの卓上静物画をかたちづくっている。端正で華麗な模写だと思って近づくと、たちまち夥しい蟻の群れに気づく。びっちりと隙間なく蠢くものへの全身が泡立つような感覚に、瞬時に名画への想いは雲散する。もじりとも本歌とりとも策略とも考える前に、思わず笑ってしまい、名画はぐっと身近になる。さまざまな線描が蟻の這った跡だったという小粋なユーモア。作家自身が蟻となってなぞっていく根気と情熱、おおらかなエネルギーがある。
新作では鎌倉時代の「九相詩絵巻」の1点をモチーフに選んで蟻で描く。死んで肉体が滅び、土に返って行く様を九場面に分けて描いたこの図は、犬や鳥に齧られる残酷さ、腐敗ガスで膨らみ、白骨化する惨たらしさが描かれ、古今東西人気がある。蟻で描かれた成清の九相詩には、テーマの死と蠢く蟻への嫌悪感との二重の重苦しさがある。だが実際には、すべて蟻の退場によって砂を払うように消えていってしまうことが無常とすがすがしさを感じさせる作品である。

INAX文化推進部 大橋恵美